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桑島由一「神様家族 4」

桑島由一「神様家族 4」  MF文庫J

 人間界で神様修行をする主人公・神山佐間太郎は横手に投げだされた状態で、これまで焦点の当たらなかったキャラクタを押しだす敗者復活戦もといプレ天界・魔界大決戦ストーリィ(大嘘)。神様家族の末娘のメメが、道ばたであるものを拾う。それはボーリングの玉ほどもある、巨大な植物のタネだった……。

 おおむね男性はヘタレぞろい、女性は坂口安吾な白い痴呆者の集団、作者の内面は真っ黒、まともなのは絵師のヤスダスズヒトくらいの狂人日記第4章。早くこの世界から消滅してしまえばよろしい。それが人類の未来のためだ。
 とかなんとか言いつつも、桑島作品はそのクズっぷりに価値を見いだしてナンボの産業廃棄物。明らかに生まれたときから誤っていた方向のセンスを特化させたゴミのお手本。そんな読み捨ての三文小説を書き散らしつづけてくれるから、ぼくたちはそこに痺れるあこがれるゥ!なわけで。ヤスダスズヒトの絵なんかオマケです、えらい人にはそれが分からんのですよ!

 廃人の標本図鑑、神山家の超責めキャラ、メメ様が人間だったころの「おいしそうな青りんごを食べました。そうしたら、芯には虫が湧いていました」的な恋物語を基底に、なんの関係もない微エロクレイジー風呂敷を広げ、回収するタイミングと終着点が見えないから強引に夢オチで処理。駄小説も極めると「こいつ、じつはすごいことを書いているんじゃあ?」などと哀れな脳をお持ちの人々をだましてまわる力を持つ。
 ……だまされていたのは俺一人だけですね。ああ、よかった<よくない。

 こんなデタラメ作家は2人いらないけれど、1人だから価値はあるようで、まったくありません。もともと特別なオンリーワンだからといって保護するつもりもありません。むしろ読む価値がないと承知していながら続刊を読んでいこうとする俺こそ、生きる価値がないのかもしれません。じつは最初から、それも了解していたのでした。な、な、なんだってェーーーーー!!

 レビュウとは、本質的に、こういう一人相撲なのだと知った20歳の夜。
# by cruel-world | 2005-12-24 23:53 | 小説

古橋秀之「ある日、爆弾がおちてきて」

古橋秀之「ある日、爆弾がおちてきて」  電撃文庫

「ブラックロッド」にはじまる『ケイオス・ヘキサ三部作』の著者、日本でいちばんギブスンに近い(言いすぎw)書き手による、「電撃hp」に掲載された6編に、書き下ろし1編を加えた計7編の短編集。イラストは緋賀ゆかり。たまに顔の比率が身体に比べてやけに大きくて気になる

 という紹介のあとに、じつは本書は「タツモリ家の食卓」風味なのでした――なんて言うと、大多数の人は分からないと思うから説明すると、古橋の著作の針のふれかたは極端で、前述の『ケイオス・ヘキサ』シリーズや『蟲忍』みたいにギブスン崇拝のサイバーパンク・ディック的なハードSFかぶれ作品があると思えば、「タツモリ家の食卓」みないにライトノベルしたドタバタコメディ作品もものしていて、そして唯一、その折衷版として書かれたのが「Ⅸ」という位置づけ。

 そもそも(ラノベのシェア内という意味で)世間的に古橋の著作で名が知られているのが「ブラックロッド」くらいしかない状況で、読者が求めるものは当然「ブラックロッド」という悲しい現実があり、でも著者が書きたいのは軽い読み物で――というニーズの食い違いが書き手――読者間にあるはずで、それは埋めきれていないんじゃないか? でも当方は両方を受け入れている人間なので、好きにやればいいと放任している。
 その結論に落ち着くまでに10行を費やしてしまいました。めんどくさい作家だなあw

 作風は(秋山瑞人と同じく)師・金原瑞人の、翻訳モノのヤングアダルトの意匠を継いだもので、それを現代日本の高校生ふう、ライトノベルふうにアレンジしたら、まあ、こうなるんだろうなあ、というところ。

 各個の作品と全体の感想。
 表題作「ある日、爆弾がおちてきて」はセツナ系のラヴ・ストーリィ。設定を並べたてて話を進めた印象だが、絶妙の語り口がそのマイナス点をおぎなって良作に仕上げている。「おおきくなあれ」は阿呆風邪、つまり若年性痴呆症をあつかったライトSF。オチが力づくだったけれど、180センチの巨大女子高生は熱かった
「恋する死者の夜」は、ロメロ版「ゾンビ」に対するささやかな反乱。本来、世界の片隅ではこういう個人的な物語がつむがれているべきだと思うので、なかなかスタンスの取りかたに感心させられる。「トトカミじゃ」は図書室に憑いた自縛霊(違うかな?)の話。こっちもオチが強引だけれど、途中までの危惧をくつがえし、超いい話になって着地してくれたので満足。
「出席番号0番」の設定は秀逸。集団ヒステリーを常態に引きおろすとどうなるか、という意欲作。これと「三時間目のまどか」はそつなくまとめた感じだけれど、窓ガラスにうつるを映像を介したタイム・トラベルは新鮮。傑作。書き下ろし「むかし、爆弾がおちてきて」は、とくに表題作とループしているわけでもなく、すこし拍子抜けしてしまった。しかし、随所にちりばめられたハードSFネタと、少年の一人語り構成のギャップが、ここまでの6編で著者が書き継いできたごった煮闇鍋的な作品群の、はたしてなにが狙いだったかということをはっきり示している。ハヤカワJAにあてつけるかのような、現代でSFが生き延びる方策の1つを、古橋秀之はライトノベルで書き上げてみせたのではなかろうか。

 うん、やっぱり追いかける価値のある作家(だいたい力技で書いているとはいえ)。
 遅筆なのが玉にきずだなあ。次回作は3年後かな
# by cruel-world | 2005-12-23 19:49 | 小説

上遠野浩平「ビートのディシプリン SIDE3[Providence]」

上遠野浩平「ビートのディシプリン SIDE3[Providence]」  電撃文庫

「電撃hp」で連載されていた(いまは完結した)長編。その第3巻。

 反統和機構組織のダイヤモンズが壊滅した。ダイヤモンズに逃げ場を作ることが頼みの綱だったビートら三人に追っ手が迫る。そして、非生物の分子構造を分解する「アースバウンド」に狙われた浅倉朝子のまえに、炎の魔女が現れた。時を同じくして『後継者』候補の1人、九連内朱巳と『最強』フォルテッシモの姿が事件の合間に見えかくれするようになる。さらに……。

 本作がブギーポップ不在のオールスター構成である以上、つべこべ言わずにキャラクタで読むのが正しい。過去作の主人公がそろい踏み。より精確に言うならば、「助けに来たぞ、仮面ライダーストロンガー!!」もしくは「助けに来たぞ、ウルトラマンタロウ!!」といったところでしょうか。昔の主役が、いまでは脇キャラあつかい。哀れすぎて涙が止まらない。

 いつぞやも語ったように、わたしは九連内朱巳の大ファンなので、超強気系言霊女性が出ているだけで満足です。べつにビートがどうなろうと知ったことではありません

 それ以上のなにを見ろと?

 ……ああ、終盤のフォルテッシモとの戦いうんぬんは、なんか×××××××の能力を無視したコンビであるように思えた。どうやっても人間は水のうえを歩くことはできないんじゃない? 上遠野ルールですか?
 そうか、やはりMPLSは波紋使いだったんだ!!

 ではでは恒例の上遠野先生が大好きな音楽ネタさらしの時間です。

 まずサブタイ。[Providence]ですか。こりゃキング・クリムゾンの『レッド』収録の曲ですね。邦題は「神の導き」となっています。本書を読むと、まあたしかに、ってところです。
 次は「アースバウンド」。こちらはクリムゾンの72年のライヴ・アルバム。録音状況がひどく悪いと不評をこうむった盤ですが、うむ、作中のモータル・ジムの人格と微妙にマッチしていて面白い。

 とりあえず上遠野はキンクリ好きすぎ。あとオアシスね。「モーニング・グローリー」なんて、常人が持ちだしてきたら寒いだけですが、この男が使うとなぜかはまる。なんでだろう。
# by cruel-world | 2005-12-22 22:29 | 小説

群像1月号

群像1月号  講談社

「日本終焉期の小泉純一郎などもやはり保守の分際で何か改革者ぶり、靖国参拝もひょうたんなまず的で、ようは典型的なおんたこである」P.23

笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」(270枚)

 近未来小説の体裁をとった脳内幻想まるだしの笙野頼子の文学的犯行声明文。小泉だけでなく柄谷行人にまで噛みつき、キモオタに噛みつき、世のなかの男性すべてに噛みつき、あげくの果てには自分にまで噛みつく。架空国家を敵にまわし、躁と鬱のあいだを行き来して、巫女として怨霊を降ろし、ロリコン・ペドフィリアを真顔で弾圧し、ムチャクチャハチャメチャ、圧倒的筆圧(あえて文圧ではないw)をもって書きつけた魂の270枚!!という感じ。
 それを全部、自覚的に書くのが恐ろしい。戯作……とは違うんだろうなあ。むつかしい。

舞城王太郎「SPEEDBOY!」(230枚)
 久しぶりに活きのいい作品。楽しいたのしい。「山ん中の獅見朋成雄」の主人公・成雄の幼少時代と高校時代、そしてマッハ20以上で海のうえを爆走する自衛隊員としての活躍を描く。ずいぶん「山ん中~」とはテイストの違う話だが。時系列を整理すると、パラドックスというかパラレルというか。「九十九十九」の発展ヴァージョンをやろうとしている印象。正直に言って、よう分からんが、まあ興味深く読めました。

・短編小説
桐野夏生「タマス君」はとくに新しく読みとるもののない、平易な作品。
清岡卓行「断片と線」はエッセイなんだか、小説なんだか。微妙。
玄月「人生の決まり方」は作者の初期テーマだった在日問題を放り投げて、ハイレヴェルな技量で書き散らしている。嫌いじゃないけど、拍子抜け。

赤染晶子「花嫁おこし」には唸らされる。自分の描いた女の声を幻聴する襖絵師――という材から見ると、まるで谷崎潤一郎の耽美小説のようだが、実態は川上弘美。ペルシャ人を終始引きずっていたのは理解に苦しむが、笙野も舞城も尋常な小説を書いてくれないので、本誌でもっとも評価の高い作品となった。そういった状況を抜きにしても良作ではある。
村田喜代子「いない、いない、ばあ」の人形(=子供)に対する愛情の深さには感じ入るところがあって、高評価ではあるものの、親子間の距離を表すために人形というモティーフを持ちだすのは適当じゃない気がする。人形は支配とか愛玩の象徴でしょう? 双方向の関係は取り結べないと思うのだが。

・随筆
 どうにも俺は山田詠美とそりが合わない。「枯葉の中の青い炎」もそうだったけれど、辻原登は史実をネタにして筆を進めるのが大好きで、役に立たなさそうな雑学を叩きこまれる。金原ひとみは、いかにも若い世代が書きそうな日常の断片。とはいえ感覚的には好きだったりする。
 そんななか平田俊子「『暗証』番号」は毒にも薬にもならないが、軽めの読み物としては文句のない優秀さでまとめられている。

・その他
 第58回野間文芸賞は村上龍「半島を出よ」。第27回野間文芸新人賞は青木淳悟「四十日と四十夜のメルヘン」、平田俊子「二人乗り」が、それぞれ受賞。佐藤友哉「子供たち怒る怒る怒る」は全審査員からシカト。さすがだ。
 いちばんいい書評を車谷長吉が書いていて、「私などは私小説しか書けなかった男であるが、ある時、『木枯らし』という幻想小説が書け、その時、これで何とかやって行ける、と思うた」なる自身と小池昌代との対比には、爆笑しながらも納得させられてしまう。
 町田康の新連載「宿屋めぐり」の書きだしは、ゴテゴテした世界観をさっ引くと、いつものアクが足りなくてコントロールされた印象が前に出てきた(それを隠していたのが町田のパンクたるゆえん)感じだが、ほうぼうで高い評価を受ける「告白」の成功を考えると予断を許さない。

 創作合評では「月とアルマジロ」の樋口直哉に対して、全員で敬遠球。しかし、彼が在日米軍と安保問題を取りあつかおうとしている、という読みは新鮮だった。平野啓一郎「顔のない裸体たち」に関しては「19世紀小説を引きずっている」としながらも「だが彼は21世紀文学の旗手だ」とする、ぶっ飛び論旨が展開される。どれだけ書き手が自分の小説作法に意識的(であるようにふるまえる?)かで評価が分かれたみたい。

 読みごたえがありました。やっぱり「群像」は人選とデザインが秀逸だなあ。
# by cruel-world | 2005-12-21 22:22 | 小説以外の本

その男、凶暴につき

「その男、凶暴につき」
1989年公開 監督;北野武


 言わずと知れた、日本を代表する大御所映画監督のデビュー作。脚本は、乱歩賞の受賞経歴を持つ野沢尚。(小ネタとして)どうやら企画段階では深作欣二が監督を務める予定だったらしい。

 暴力沙汰、賭博に恐喝、拷問、そして傷害事件。署内で爪弾きにあっている刑事の我妻は、自分と組むことになった新人刑事を引きずりまわしながら、刑事の一人を撲殺した逃亡犯を追跡していた最中に、勢いあまって相手を轢いてしまう。署内における立場が悪化する我妻の元へ知らせが入った。たった1人の自分の理解者・岩城刑事が死んだという、知らせだった。じつは彼は、覚醒剤を横流しにしている人間だった……。

 ホームレスの中年男性が少年たちにリンチされて殺害される冒頭から、1対1の撃ち合いで幕を閉じる終盤まで、なにやら、みぞおちに鈍い痛みを感じながら鑑賞していました。言うなれば、不快ならぬ不快感といったところかな。
 15年もまえの、ぼろぼろのヴィデオ・テープで見る映像と、耳にする音楽は劣化してはいるのだけれど、それが変てこなアクセントをつけていて、偶然の産物的な面白味を加えていた。DVDじゃ、こういう感覚は味わえないよなあ。
 それと、たしかに劣化してはいるものの、個々のシーンの色調が印象的だ。内臓のあたりまで、すとん、と落ちてくるようなイメージづけがあった。とくに主人公が腹を刺される繁華街のシーンと、ほとんどすべての流血シーン、それにラストの光と闇の構図らへん。

 監督兼主役の北野武の演じる刑事、男色の大陸系(っぽい)殺し屋、恐ろしいほど若々しい岸部一徳が扮する黒幕だとか、濃いなあ、みんなの役どころが。署長役の佐野史郎がいちばん気持ち悪くて大成功だったように思える。
 哀れすぎて仕方ないのが主人公の妹で、いわゆる瘋癲病院から退院してきたばかりなのだが、抗争に巻き込まれるわ、覚醒剤を打たれるわ、レイプされるわ、うんぬんかんぬんで救いがなさすぎる。この人だけじゃなくて、誰も救われない作品ではあるが。

 興行的に成功しなかったのも頷ける話で、エロもバイオレンスも全編に盛り込みながら、北野武は真っ正直なエンターテイメントとして作る気がさらさらないみたい。『ヒート』のような多人数の銃撃戦も爆発も、ストイックなまでに抑えてある。表層的には大藪春彦やら、北方謙三が見えるのだけど、ハードボイルドかというと、それもまた違う。ふだんの立ち居振るまいからは想像できないほど繊細な場所に『ビートたけし』≠『北野武』は立っていて、独自の切ないバイオレンス観にもとづいた『我妻諒介』の孤独な世界がそこには広がっている。
 うわ、サティが使われてる! びっくりした!

 とても手放しで傑作とは言えないが、深いところで感じ入るナニモノかの存在が鮮烈。
# by cruel-world | 2005-12-20 23:10 | 映画



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